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訪問美容師とは
訪問美容師とは、さまざまな事情で美容室へ通うことができない方のところへ訪問し、ヘアカットなどの施術を行う美容師のことです。
美容師は原則として、許可された場所でしか施術を行えませんが、訪問美容師は保健所の許可を得ることでお客様のいる場所へ出向いて施術を行うことができます。
主な対象者は、高齢や病気、障がいにより、ひとりで外出するのが困難な方や、介護や育児で自由に出かけられない方などです。
このような方にとっては、訪問美容は美容室へ行かなくても、希望の髪型に整えることができるため、便利なサービスといえます。
訪問美容が注目される理由
近年、高齢化が進み、訪問美容の需要が高まっています。内閣府の発表によると、年には国民の約2.6人に1人が65歳以上になると推測されています。
年齢を重ねることで身体に支障をきたしやすくなり、サポートが必要になるケースがありますが、外出が困難になってもおしゃれを楽しみたい高齢者は一定数います。
そのため、訪問美容サービスを利用すると自ら美容室へ行く必要がないため、高齢者のニーズに対応できることから注目されているのです。また、理容師法と美容師法の改正により、対象範囲が拡大されたことも、訪問美容の知名度を向上させる要因になりました。
出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書(全体版)」
訪問美容師の仕事内容
訪問美容師の仕事は、カット・パーマ・カラーリングなど、一般的な美容師が行う基本的な施術内容とほぼ同じです。
ただし、施術範囲は訪問先の設備によって変わる場合があります。例えば、移動式のシャンプー台があれば、カットだけでなくシャンプーやパーマなども施術可能です。
また、訪問美容師は自宅や施設などへ出向いて施術を行うため、サロンよりも衛生面の配慮が必要です。例えば、病気療養中の方は免疫力が低下している場合があり、慎重な対応が求められます。
美容室へ来られないお客様の中には体調が優れない方もいるので、清潔な状態を保ちながら施術することが大切です。
また、お客様が施術中に気分が悪くなってしまった場合、短時間で終わらせるといった体調に応じて臨機応変に施術内容を変更するケースもあります。認知症の進行により、希望の髪型を伝えられないお客様には、家族や施設職員の意見を取り入れながら施術することもあります。
訪問美容師における施術の流れ
訪問美容師が予約を受けてから、施術が完了するまでの流れは下記の通りです。
1.予約受付後、本人や家族、施設担当者などへ、ヒアリングを行う。その際、施術内容の希望を伺い、健康状態や注意点などを把握し、施術内容や日時を決定する。
2.施術当日に訪問先へ行き、施術スペースを確保し、必要な道具を準備しておく。事前情報を元に、当日の健康状態や注意点を再確認してから施術を始める。滞りなく終了できるように、施術中も常にお客様の体調を気にかけながら進める。
3.施術終了後、床に落ちた髪の毛をまとめたり、道具をしまったりして迅速に片付ける。お客様に施術費用を伝え、会計を済ませて領収書を発行する。お客様によっては、次回の施術日を予約される方もいるため対応する。
4.1~3の工程が済んだら、持参した道具が揃っているか確認し、すみやかに移動する。
訪問美容師になるには美容師免許が必要
訪問美容師になるには、ヘアカットやパーマなどの施術を行うための知識や技術が必要なため、美容師・理容師免許が必要不可欠です。これらの資格を取得するには、養成機関で実践的なスキルを身に付け、国家試験に合格しなければなりません。
ただし、訪問美容師になるには、最低限美容師や理容師の免許さえあれば、従事することは可能です。とはいえ、美容室と異なり転倒のリスクが高い高齢者の方や、病気を患っている方が対象者となるため、美容以外の知識もあると施術時に役立ちます。
訪問美容師におすすめの資格
訪問美容では高齢者や入院中の方、障がい者など、配慮が必要なお客様と接する機会が多いため、介護の知識があるとスムーズに仕事を進めることができます。
ここでは、訪問美容師におすすめの資格を3つ紹介します。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)の資格があると、介護に役立つ知識が身に付き、訪問美容に活かせます。
資格を取得するためには、9科目130時間の講義と演習を行い、介護の基本的な知識と技術を学ぶ必要があります。この資格を取得すると、認知症の方に対しての適切な接し方がわかるようになり、戸惑わずに対応できるようになるでしょう。
また、介護職員初任者研修を修了してから試験に合格すると、お客様の身体介護にも対応可能です。訪問美容で車いすから椅子への移乗が必要なお客様がいても、ケガのリスクを回避しながら対応できます。
訪問福祉理美容師
訪問福祉理美容師は、一般社団法人日本訪問福祉理美容協会(JVBWA)が実施している認定資格のひとつです。高齢者や障がい者の方に適したサービスを提供できるよう、1日のみの講座で訪問美容の基礎・準備から施術までの内容、注意点などを体系的に学べるのが特徴です。
また、資格取得後は提携先の専門業者を通して、実務サポート(訪問美容に必要な準備や手続き、保険など)が受けられるメリットもあります。
福祉理美容師
福祉理美容師は、NPO法人日本理美容福祉協会が証明する理美容の出張サービスに特化した認定資格です。この講座で学ぶと、高齢者や身体に障がいがある方などの適切な介助方法を身につけることができます。
ベッドから起き上がるのが困難な方に対して、寝たままでのシャンプーのやり方や、寝たきりの方に対してカットする方法など、訪問美容に役立つ実践的な内容が学べるのが特徴です。
この講座では、オンラインによる自宅学習と2日間の実技講習の学習プログラムを終えると、認定書を受け取れます。
訪問美容師としての働き方
訪問美容師として、どのような働き方があるのでしょうか。ここでは、訪問美容サービスがある美容室で働く方法と、フリーランスとして働く方法にわけて解説します。
訪問美容サービスを提供している美容室で働く
自分で営業するのが苦手な方におすすめなのが、訪問美容サービスを提供している美容室で働くことです。契約先からの依頼や美容室で直接予約を受けてから、介護施設や病院、お客様の自宅などに出向いて施術します。
訪問美容専門の部門がある美容室で働くことで、サロンの美容師として実績を積み重ねることができるだけでなく、訪問美容の専門的なノウハウが学べます。
また、正社員やパートなど、それぞれの美容室によって働き方が異なるため、ライフスタイルに合わせて選択できるのもポイントです。ただし、サロンワークと訪問美容にかける割合は勤務先によって異なるため、事前に配分を確認しておきましょう。
フリーランスの訪問美容師として働く
勤務先の美容室から独立して、フリーランスの訪問美容師を目指す方法もあります。フリーランスの訪問美容師になると、依頼を受けてからお客様の自宅や施設へ訪問して施術するため、比較的自由な働き方が可能です。お客様から力量を評価されると、リピーターにつながる確率が上がります。
また、美容室を一から開業するには、店舗探しや備品などを揃えなければならず、まとまった資金が必要です。開業してからもランニングコストとして、家賃や光熱費などがかかります。
一方、フリーランスの訪問美容師の場合、お客様のところへ行って施術するため、ガソリン代や材料費など必要最低限の費用しかかかりません。
月にかかるコストが少なく、相対的に利益を出しやすいのがポイントです。自分で営業する必要はありますが、開業資金が抑えられるのは魅力といえます。
まとめ
訪問美容師は、外出が困難な方や高齢者に対して、直接施設や病院、自宅に伺いカットやパーマなどの施術を担当します。高齢化が進んでいるため、その需要はますます高まることが予想されています。
また、国家資格の美容師・理容師免許があれば、誰でも訪問美容師になれるのが特徴です。美容室に所属して訪問美容サービスに携わる方法と、フリーランスとして働く方法から選べるため、ライフスタイルや目標によって自分に合った働き方を検討しましょう。