セラピストになるには?必要な資格や目指す方法、向いている人を解説

人の心身を癒す職業である「セラピスト」は、人の役に立ちたい方におすすめの職業です。しかしセラピストといっても、その仕事内容や役割には、多くの種類があります。なかには、セラピストになりたいと思っても、自分に向いているのか気になる方もいるでしょう。 今回は、セラピストになりたい方に向けて、セラピストの種類や必要な資格、適性について紹介します。


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まずはセラピストの種類を知ろう!

セラピストと呼ばれる職業には、数多くの種類が存在します。「マッサージをして心身を癒す職業」の印象が強いですが、実際は健康や栄養学、メンタルケアなど、心身のトータルケアを施すのがセラピストの役目です。

細かく分類すれば数え切れないほどの種類があるかもしれませんが、ここでは大きく4項目に分類して紹介していきます。

ボディ系

ボディ系のセラピストは、リフレクソロジストやリンパドレナージュなど、直接身体に触れてリンパを流したりツボを刺激したりするセラピストです。手技での施術が多く、身体の不調改善や疲労の回復を目指します。

スポーツ施設に在籍し、選手のパフォーマンス向上を促すスポーツセラピストや、介護施設に在籍し高齢者に施術する、介護リハビリセラピストも人気です。

メンタル系

メンタル系のセラピストには、公認心理師や臨床心理士、一般企業や学校に在籍する心理カウンセラーなどが当てはまります。

精神分析やカウンセリングを行い、さまざまな心理療法を用いてアプローチすることで心理的ストレスを軽減させます。

悩みやストレスを抱える人の話を聞きながら寄り添い、解決へ導けるように支援するのがメンタル系セラピストの特徴です。

医療系

医療系セラピストとは、国家資格を取得した、医療行為としての施術ができるセラピストを指します。鍼灸師(はり師/灸師)や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士、作業療法士が医療系セラピストの職種です。

鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師は、治療院に所属するか、独立して治療院を経営する方が多くを占めます。

柔道整復師は、いわゆる整骨院や接骨院の先生です。捻挫や打撲、骨折の治療のほか、運動療法や運動指導を行います。

理学療法士や作業療法士は、医療施設や介護施設などに所属し、リハビリを通して運動機能や日常生活に必要な動作の回復を促します。

リラクゼーション系

リラクゼーション系セラピストは、アロマセラピストやエステティシャンが該当します。手技やアロマ効果から、心身ともにリラックスしてもらうことが目的です。

さらに細かく分類すれば、ボディセラピストやリンパセラピストもリラクゼーション系と呼ばれます。

主にサロンに所属して施術を提供するほか、自宅サロンを開業して個人でリラクゼーションを提供する方も多く存在します。

セラピストの資格にはどんなものがある?

セラピストには多種多様な職種があるため、職種によっては特別な資格をもたなくてもセラピストを名乗ることができます。しかし、進む分野や職業によっては、それに応じた資格を取得しなければなりません。ここからは、項目別に必要な資格や役立つ資格例を紹介します。

ボディ系

ボディ系セラピストの主な資格は下記の通りです。

JRECリフレクソロジスト認定ライセンス

JRECリフレクソロジスト認定ライセンスは、リフレクソロジー、生活テーピング、くらし薬膳という3つにカテゴライズされています。JRECが主催するライセンス認定試験に合格すると、資格取得できる民間資格です。

下記のように3つのカテゴリーから、さらに細かなライセンスに分けられます。

ライセンス 説明
リフレクソロジー レギュラークラス リフレクソロジーの技術を習得するとともに、食事内容や栄養の働きの知識についても学びます。
マスタークラス
トップインストラクター
サポートケア/デイリーケア・リフレクソロジスト
生活テーピング 生活テーピングコーディネーター スポーツテーピングの技術を応用して、日常生活のサポートを目的としたテーピング技術を習得します。
くらし薬膳 くらし薬膳プランナー 特別な食材を用意せず、普段の料理を薬膳に変えるスキルを習得します。
くらし薬膳マネージャー

出典:JREC日本リフレクソロジスト認定機構「JREC認定ライセンス一覧

スポーツセラピスト検定

スポーツセラピスト検定は、日本セラピスト認定協会が実施している民間資格です。スポーツコンディショニング法を用いて、プロ・アマ問わずスポーツ選手の体調管理やメンテナンスを行います。

資格の種類は、3級、2級、1級、教職員に分かれており、3級〜1級では、学科と実技の試験を受験しなければなりません。

解剖学や運動学、栄養学、スポーツ心理学といった知識をはじめ、テーピングやスポーツ整体などのスキルが求められます。

出典:NPO法人 日本セラピスト認定協会「スポーツセラピスト検定

日本エステティック協会(AJESTHE)の資格

日本エステティック協会は、エステティシャンの育成や資格認定などを行っている団体です。協会の認定資格を取得すれば、エステティシャンに必要な知識や技術があることを証明できます。

また、エステティシャン業界だけでなく、関連業界でも信頼と実績を示せます。取得可能な資格は下記の通りです。

ライセンス 説明
AJESTHE認定エステティシャン 基本的な知識・技術を習得します。
AJESTHE認定上級エステティシャン 専門的な知識・技術を習得します。
AJESTHE認定トータルエステティックアドバイザー エステティックを総合的に深く理解し、実践力とサロンでの指導力を有するエステティシャンに与えられます。
AJESTHE認定フェイシャルエステティシャン・AJESTHE認定ボディエステティシャン 衛生面や安全面を考慮し、エステティックの基礎知識をはじめ、フェイシャルケア・ボディケアの基礎を有していると認められたエステティシャンに与えられます。

そのほか、エステティシャンとして医療や福祉の知識に基づいたケアを提供したいときは、AJESTHE認定ソシオエステティシャンの資格取得がおすすめです。

出典:一般社団法人 日本エステティック協会「資格・検定について

メンタル系

メンタル系セラピストの主な資格は下記の通りです。

公認心理士

公認心理士は、公認心理師登録簿へ登録される国家資格です。公認心理士の資格を取得すれば、心理学に関する専門的知識と技術をもっていることが証明され、保健医療、福祉、教育などの分野で、心理状態の観察や分析、助言や指導を行えます。

試験内容は、福祉や教育、産業や組織などさまざまな分野に関する心理学をはじめ、人体の構造や疾病、公認心理師に関する制度まで幅広く問われます。

出典:厚生労働省「公認心理師

臨床心理士

臨床心理士は民間資格ですが、指定大学院を卒業しなければ受験資格が得られない専門性が高い資格です。

試験は一次試験(筆記)と二次試験(面接)に分かれ、心理学の基礎的設問や、臨床心理士の基本業務に関する専門知識が問われます。

出典:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会「公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会

医療系

医療系セラピストの主な資格は下記の通りです。

鍼灸師(はり師・きゅう師)

鍼灸師は、「はり師」と「きゅう師」の2つの国家資格を取得する必要があります。資格を取得することで、東洋医学の専門家として身体のツボを刺激して、自然治癒力を高める施術が可能になります。

鍼灸系の専門学校や鍼灸学科がある大学へ進学し、知識を得てスキルを学び資格取得が可能です。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、器具を使わず指圧の技術で身体の不調を和らげるスキルを証明する国家資格です。

資格取得には、指定された学校や養成施設で3年以上学ぶ必要があります。あん摩マッサージ指圧師の資格を取得できる学校は少なく、全国で20校程度しかありません。倍率も高く学校へ入学することも難しい現状ですが、しっかり学べば高い確率で合格できる資格でもあります。

出典:厚生労働省「あん摩マッサージ指圧師国家試験の施行

理学療法士

理学療法士の資格も、国家資格です。事故や病気で身体が不自由になっている方や、高齢で身体の機能が低下している方に対して医師の指導のもと、リハビリで回復を促します。

指定された学校や養成施設で3年以上学び、資格を取得します。試験は、筆記試験と口述試験に分かれており、運動学や臨床心理学、リハビリテーション医学などが対象です。

出典:厚生労働省「理学療法士国家試験の施行

作業療法士

作業療法士も国家資格のひとつです。食事や入浴など(作業)を支援し、その人らしい生活が送れるようサポートする仕事です。

資格取得には、指定された学校や養成施設で3年以上学んで、試験に挑みます。必要な知識と技能を習得する必要はありますが、合格率は例年80%前後と高い水準を維持しています。しっかりと学び、受験対策をすることで合格を目指せるでしょう。

出典:一般社団法人 日本作業療法士協会「作業療法士とは

リラクゼーション系

リラクゼーション系セラピストの主な資格は下記の通りです。

AEAJアロマセラピスト

AEAJアロマセラピストは、アロマテラピートリートメントを通してリラクゼーションや心身のケアを行える民間資格です。皮膚科学や解剖生理学、精油の専門知識などを習得することを目的としています。

AEAJアロマセラピストを取得するには、下記7つのステップが必要です。

1 アロマテラピー検定1級を取得
2 AEAJに入会
3 アロマテラピーアドバイザー資格を取得
4 認定スクールに通いアロマセラピスト必須履修科目を修了
5 アロマセラピスト学科試験合格
6 トリートメント実技試験合格
7 カルテ演習を修了

アロマセラピストは、資格なしでも名乗ることはできますが、資格を持っていると信頼性が高まり、仕事の幅も広がります。

出典:公益社団法人 日本アロマ環境協会「アロマセラピスト

リンパケアセラピスト

リンパケアセラピストは、日本能力開発推進協会が実施している民間資格です。

取得には、骨や筋肉をはじめ、脳や神経、消化器官などの基本的な身体の仕組みを理解するとともに、アロマオイルの効能やリンパマッサージの技術が求められます。

カリキュラムを修了すれば在宅で受験できるため、比較的人気の高い資格です。

出典:一般財団法人 日本能力開発推進協会「リンパケアセラピスト資格

カラーセラピスト

カラーセラピストは、一般社団法人日本色彩環境福祉協会が認定する「カラーセラピスト®」の資格です。取得することで、色彩を活用したセラピーを行い、心を癒すサポートができます。

取得するには、講座を受講し修了時の検定試験に合格する必要があります。通信講座や通学講座から選べる上、誰でも受講できるので比較的取得しやすい資格です。

出典:一般社団法人 日本色彩環境福祉協会「カラーセラピスト

セラピストになる方法は?

セラピストになるには、大きく分けて4つの方法があります。進みたい分野や職種によっても条件は変わりますが、自身の状況なども含めて確認してみましょう。

大学に通う

国家資格を必要とするセラピストを目指す場合は、指定された大学や学部に通わなければなりません。また、資格試験を受ける条件に「大卒や大学院卒」があげられる場合は、大学の単位取得が必須となります。

国家資格を必要としないセラピストを目指している場合でも、大学を卒業していることでキャリアの選択肢を広げられる可能性があります。

新しい大学制度で職業に直結した教育を行う専門職大学も卒業時には学士が与えられます。美容を学べる大学として2023年4月にはビューティ&ウェルネス専門職大学が開学しています。

専門学校に通う

セラピストの職種によっては、専門学校で学べる場合もあります。例えば、エステティシャンや鍼灸師を目指せる専門学校などです。

アートセラピーの専門学校やペットセラピーの専門学校など、多種多様なセラピストへの道があるため、自分の進みたい職種に特化したコースやカリキュラムがある専門学校を選びましょう。

専門学校は特定の分野に特化した知識を習得できるので、明確になりたい職業が決まっている方におすすめです。

通信講座を利用する

通信講座を利用するメリットは、なんといっても時間や場所にとらわれずに受講できる点です。

受講費も通学に比べると低額である場合が多いため、挑戦しやすい点もメリットです。平均学習時間は6か月程度ですが、自分でしっかりと学習時間を確保しなければ資格取得まで届かないこともあります。

サロンで働いて研修を受ける

医療行為が伴わないセラピストになりたい場合は、未経験OKのサロンで働きながら現場で実践的に学ぶ方法もあります。

施術を行うプロの仕事を間近で見られる点は、セラピストを目指す上で大きなメリットといえるでしょう。

資格取得のサポートをしてくれるサロンもあるので、働きながらセラピストを目指したい方におすすめです。

セラピストに向いている人の特徴とは

どのような人がセラピストに向いているのでしょうか。ここでは、セラピストの適性を4つの観点から解説します。

人と話すことが好き

セラピストは人を癒す仕事であり、接客業ともいえます。サロンには身体だけでなく心の癒しを求めて施術を受ける方も少なくありません。お客様の悩みを聞いたり、心地良く過ごしてもらうために会話をしたりすることもセラピストの仕事のひとつです。

そのため、人と接することが好きな方や会話が楽しいと思える方は、セラピストに適性があるといえます。

体力・精神力がある

体力や精神力に自信がある方は、セラピストが向いています。サロン勤務のセラピストの主な仕事は、お客様の身体をマッサージすることです。

一般的な施術時間は30分~2時間程度で、施術中はケアするための体力が必要です。人気店では次から次へとお客様の対応をしなければならないこともあるでしょう。

来店する人の多くは悩みや不調を感じているため、セラピスト自身が元気でなければお客様に満足のいくサービスを届けることが難しくなります。

また、お客様の身体と心を癒すためには、セラピスト自身の精神面も安定している必要があります。

トラブルが起きても冷静に対処したり、常に笑顔で接したりするなど、感情のコントロールが欠かせません。体力があり、精神的にも穏やかな方は、セラピストになっても無理なく働けるでしょう。

人に尽くしたい気持ちが強い

人のために何かしてあげたいと思う気持ちが強い方ほど、セラピストに向いています。お客様は心が疲れていたり、倦怠感や肉体疲労を感じていたりします。お客様の悩みを聞き心と身体を癒すのがセラピストです。お客様に楽になってもらいたい、疲れを癒してあげたいと寄り添い理解する姿勢がなくては一流のセラピストにはなれません。

報酬だけではなく、お客様に喜んでもらえることにやりがいや満足感を得られるような方はセラピストとしての適性が高いといえます。

向上心がある

海外の情報や最先端の技術など、流行に敏感で学ぶ姿勢がある方はセラピストに向いています。セラピストになってもスキルアップを怠れば、時代に取り残されてしまいます。

そのため、日頃から情報をキャッチするために、アンテナを張り巡らせて知識や技術を習得するために努力する姿勢が大切です。現状に満足せず、お客様により良いサービスを提供するために向上心をもって学べる方はセラピストとして活躍できるでしょう。

まとめ

セラピストといっても、数多くの職種があります。中には、資格取得条件のハードルが高いものもありますが、資格の取得でより専門的な分野で働けます。

また、セラピストに向いている方は、「人と話すことが好き」「体力・精神力に自信がある」「人に貢献したい」「向上心がある」などの特徴があげられます。自分の適性を見極めながらなりたいものを明確にして、ぜひ夢を実現させてください。